オダワラの魅力を、多角的に。

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【小田原style】「時代を先取り、時代を創る」佐藤ルミナのルーツ

マイナーの中に秘めたるポテンシャルを見出し、実践して広めるルミナstyle

小田原市を拠点に、マイナーをメジャーへと導くプロフェッショナルがいる。「留美奈」として生まれ育ち、「ルミナ」として修斗という無名に近い競技を世に知らしめた総合格闘家だ。スノーボード、サーフィン、ファッション…。格闘家に対する当時のイメージを払拭し、多種多様なメディアを彩った「修斗のカリスマ」。50歳を目前にした今もなお、時代を先取り、実践して魅力を発信し、時代を創っている。

■佐藤ルミナ(本名 佐藤留美奈) sato rumina
1973年12月29、小田原市生まれ。一般社団法人日本修斗協会理事長、アマチュア修斗委員会委員長。西湘高校卒業、日本体育大学在学中の1994年11月に総合格闘技「修斗」でプロデビュー。破竹の快進撃と観る者を魅了するアグレッシブなファイトスタイルで「修斗のカリスマ」と称され時代の寵児に。2005年、小田原市内で一般社団法人日本修斗協会オフィシャルジム「ROOTS」を開く。ROOTS記事はこちらから

「留美奈」として生まれ、自然に囲まれ、マイナーに夢中になった少年時代

「今朝もサーフィンしてきたよ。フォイルサーフィンが凄い、とにかく凄いのよ」。大雄山線「緑町」駅からほど近い、残暑厳しい昼過ぎのイベントスペース。Tシャツ短パン姿で現われたルミナは開口一番、白い歯を見せた。こんがりと日焼けしたカラダは、アラフィフとは思えないほど研ぎ澄まされている。修斗のカリスマとして時代の寵児となった総合格闘家は「フォイルサーフィンは修斗以来の衝撃的な出会いかな」と、少年のように目を輝かせた。

1973年12月29日、佐藤家の次男「留美奈」として生まれた。昆虫や草花など自然に精通する「街の博士」の父が、尊敬する学者と相談した結果、ラテン語の「luna=月」を「Lupinus=狼」を合わせ、命名した。「キラキラネームの走りだよね。さすがに当時は男の子で留美奈はいないでしょ。そりゃ小さい頃は嫌だったけど、今は良かったかな」と笑った。

団塊ジュニアの第二次ベビーブームにおいて出生数が最も多い209万1983人の中の一人。実家の小田原市城山周辺をはじめ、海、山、川など小田原市内に点在する自然を探索するように過ごした幼少期を「とにかく興味を持ったことは何でもやらせてもらえたし、やってきたよね。親父もウインドサーフィンやカヤックなど当時では珍しいことにもチャレンジしていたし。自分のルーツだろうね」と振り返る。

御幸の浜_小田原style_arawado

修斗との衝撃的な出会いを境に、「ルミナ」への道を歩み始める

ジャンプ黄金期の1980年代-。キン肉マン、北斗の拳、ドラゴンボールの話題でもちきりになる年齢になっても「流行の漫画やアイドルとか、本当にメジャーへの興味がなくて。何だろうね不思議となかったんだよね」と笑う。スケボーやエアガンなど、マイナーな競技やガジェットであればあるほど熱中する少年期を過ごした。

人生の転機は突然訪れた。地元の高校に通いながら漠然と過ごした2年生の1990年だ。インターネットが浸透していない時代、たまたま目にした専門誌で修斗を知った。初代タイガーマスク・佐山聡氏が創始した、プロレスとは一線を画す「競技としての総合格闘技」として誕生した修斗。「競技を通じて心技体を鍛える」そのコンセプトこそが人生最大の衝撃だった。

打撃、蹴り、組技、投げ技、絞め技に特化した、あるいは複合させた競技は存在するが、その全ての要素を備える競技はなかった。「やばい」「世界的に流行る」との衝動は、「俺が広める」「俺は修斗で食べていく」との根拠なき自信に変わった。会社員という選択肢がなかった留美奈にとって自身のルーツに響く天職との出会い。

その日を境に、「ルミナ」への道を歩み始めた。

rumina_小田原style_arawado

デビュー戦から快進撃、「修斗のカリスマ」として修斗と自身の未来を創る

1994年11月7日、後楽園ホールでの修斗デビュー戦で2R勝利を飾ると破竹の11連勝-(1引き分け挟む)。1997年、修斗と自身の未来を創った試合が2つある。1月18日のヒカルド・リッキー・ボテーリョ戦(修斗)でのブラジリアン柔術の黒帯から世界初の一本勝ちと、11月29日のジョン・ルイス戦(VALE TUDO JAPAN ’97)だ。

それまで最強の修斗勢すらも一蹴されたブラジリアン柔術からの大金星で世界に衝撃を与えた。「柔術に勝って修斗のやってきたことが間違いじゃないと世間にも認められ始めて、一気に総合格闘技ブームに火が着いたよね。やったな、と」。さらには眼窩底骨折で惨敗に等しい引き分けからのリベンジに成功した。修斗の名誉挽回と自身の汚名返上を成し遂げた若武者は、いつしか「修斗のカリスマ」として時代の寵児となっていた。

テレビ出演をはじめ、格闘技専門誌、スポーツ誌、ファッション誌、そしてサブカル誌に「佐藤ルミナ」の文字が踊った。メディアを通じて多種多様なジャンルで活躍する人物と出会い、交流し、見聞を広め、新たなマイナーの魅力に触れる。「どの世界でも第一線で活躍している人はものの見方が違うし、刺激を受けるよね。自分も小さい頃からそんな感じだし、異分野との交流は本当に刺激になっている」。

1999年1月15日、「開始6秒 跳びつき腕ひしぎ十字固め」の伝説勝利など、アグレッシブに一本勝ちを狙うスタイルで修斗を世に広めた。格闘技ブームで他競技や他イベントに流れる選手が相次ぐ中、修斗一筋を貫き、2014年5月5日のプロフェッショナル修斗25周年記念大会で惜しまれながら引退した。

rumina_小田原style_arawado

ROOTSを拠点に、時代を彩り時代を創るプロフェッショナル

小田原市本町「かまぼこ通り」エリアのROOTSを拠点に、日本修斗協会理事長、アマチュア修斗委員会委員長として総合格闘技の普及に尽力する多忙な日々。その合間を縫うように、今はフォイルサーフィンにはまっている。「サーフィンのために仕事をしているような感じだよね」。

サーフボードにハイドロフォイルという水中翼を取り付けることで加速とともに揚力が生まれ、ボードが浮き上がり海面スレスレを飛ぶように進むフォイルサーフィン。動画を見ながら「浮く理論とか分かる? ちょっと意味不明でしょ。修斗以来の衝撃的な出会いで、もっと上手くなりたいし、世に広めたいんだよね」と笑った。

「協会トップの立場から引退したいけど…。ただ、若い人から『自分がやりますから、ルミナさんはもう辞めてください』と言う声が上がるような魅力的な組織にしなければならないし。孫にも『おじいちゃんは昔、修斗のプロ選手だったんだよ』と自慢したいしね」。

マイナーの秘めたるポテンシャルを見出し、実践して世に広める-。「修斗のカリスマ」として総合格闘技を世に広めたルミナは今もなお、時代を先取りし時代を創っている。自身のルーツを追い求めるかのように。

rumina_小田原style_arawado

佐藤ルミナに聞く ルミナstyle

-座右の銘は?
「本当によく聞かれるけど特にないんだよね…。強いてあげるなら『stay positive』ですね。基本的にネガティブに考えずに前を向いてかな」

-プロフェッショナルとは?
「プロとして、お金をいただいて競技をする以上は、モチベーションがない人は試合に出てはいけない。強烈なモチベーションがないとお客様に失礼になるので

-年齢による変化は?
「フォイルサーフィンのおかげで体力的にはここ10年で一番いいぐらい。ただ、年齢とともに動ける時間は限られてくるので、無駄な時間は1秒たりともつくりたくないと強く思うようになりましたね

-お気に入りのスポットは?
「ROOTSの周りかな。老舗の蒲鉾店が並ぶ情緒あふれる『かまぼこ通り』など、海にも近いし観光客にも来てほしいですね

-好きな食べ物は?
「焼肉、寿司、そば

-地元で行きつけの飲食店は?
「小田原駅前のじんりき厨房わびと

-小田原の印象は?
「ほどよく都会でほどよく田舎かな。東京にもすぐ行けるし、交通の便は良いですね

-小田原への期待は?
「まだまだ考え方が固い部分もあるので、全体を俯瞰しながら柔らかい思考も必要かなと。頭を柔らかくするような活動にも携わっていきたいですね

取材こぼれ話

「オダワラの魅力を、多角的に。」がコンセプトの小田原style。小田原をはじめ西湘エリアの誇りとなる企業、団体、人物などを紹介する【pride】の人物第1弾は佐藤ルミナに、と決めていた中で、多忙にもかかわらず快く応じてくれた。大学を中退しイタリアに渡ってからも帰省の度にアポなしでROOTSに顔を出しては、「活躍する同級生」からエネルギーをもらっていた。30年ぶりぐらいだろうか、卒業アルバムを手に取ってみた。私の右隣に「佐藤留美奈」、左隣に野球部エースで京都大学に進学した「O君」、そして下には西湘高校初の東大合格を果たした「A君」…。成功者とか学歴至上主義とかの話ではなく、この3人に共通していたのは「周囲の『100%無理だろう』との声にもブレない信念」だった。自ら限界を設定するのではなく、可能性に挑戦する姿は眩しかった。

■小田原style■
 小田原styleは「オダワラの魅力を、多角的に。」をコンセプトに、小田原市内を拠点にフリーランスでWeb marketing & promotion事業を展開するarawadoが2022年夏から制作・運用するWebメディアです。現時点でのカテゴリは「spot」「gourmet」「lifestyle」「pride」「column」で、それぞれのテーマは下記になります。 

・spot…小田原をはじめ西湘エリアの観光地や景勝地、SNS映えするような場所の紹介。  
・gourmet…小田原をはじめ西湘エリアの名産品、飲食店などグルメの紹介。 
・lifestyle…小田原をはじめ西湘エリアのジムや習い事、サークルなどライフスタイルの紹介。 
・pride…小田原をはじめ西湘エリアが誇る企業・団体・人物・イベントなどの紹介。  
・column…小田原をはじめ西湘エリアに関することを自由気ままにコラムで紹介。

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taka

イタリア在住10年の経験則で、仕事の終了時間をリスペクトするアラフィフおっさん。慶應義塾大学環境情報学部中退⇒イタリア国立ペルージャ外国人大学留学中にイタリア語通訳などを始める。イタリア最大スポーツ紙La Gazzetta dello Sport翻訳記事@livedoorニュース▶セリエA通信員&記者@日刊スポーツ▶コピーライター&企画&コンテンツマーケティング@広告代理店▶Webディレクター&Web広告&SNSキャンペーン@Web制作会社▶今ここ。趣味はフットサルとたまにする料理。 詳細は「about」ページに 。

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